タイムトラベラー・キス
今日の献立は肉じゃがにお味噌汁、カボチャのサラダに冷奴というヘルシーなものだった。
「いただきまーす」
両手を合わせてからそう言うと、お母さんが「手を合わせるなんて珍しい」とつぶやいた。
……高校生の私は、手を合わせるということはしていなかったらしい。
そうか、これは野々村くんが毎日やっているから自分も真似たんだったな。
よく分からないけど嬉しくなって、にやついてしまう。
肉じゃがを一口食べると、変わらないお母さんの味が口の中で広がった。
「お母さん、いつも変わらない味でおいしいよ」
「何それ、よく分からないけど褒められているのかしら」
「うん、お母さんのご飯は本当においしいよ」
「ありがとう。今日の雫、なんか変だね」
お母さんはそう言いながらも嬉しそうに笑っていた。