タイムトラベラー・キス

今日の献立は肉じゃがにお味噌汁、カボチャのサラダに冷奴というヘルシーなものだった。


「いただきまーす」


両手を合わせてからそう言うと、お母さんが「手を合わせるなんて珍しい」とつぶやいた。
……高校生の私は、手を合わせるということはしていなかったらしい。

そうか、これは野々村くんが毎日やっているから自分も真似たんだったな。
よく分からないけど嬉しくなって、にやついてしまう。

肉じゃがを一口食べると、変わらないお母さんの味が口の中で広がった。



「お母さん、いつも変わらない味でおいしいよ」


「何それ、よく分からないけど褒められているのかしら」


「うん、お母さんのご飯は本当においしいよ」


「ありがとう。今日の雫、なんか変だね」


お母さんはそう言いながらも嬉しそうに笑っていた。


< 131 / 276 >

この作品をシェア

pagetop