タイムトラベラー・キス
よく考えたら、彼と何を話したらいいのかよく分からない。
いまこの時代で流行っているものも知らないし、学校の生徒のこともうろ覚えだ。

……確か困ったときは天気の話って、昔の上司に聞いたような気がする。


「今日は天気がとてもよくて、絶好の公園日和だね」


「そうだねー、外でのデートもいいね。でも俺は雫ちゃんと部屋でのんびりしたいな」


はあ、本当にこの人には性欲しかないのだろうか。
きっとどんな話をしても、どんなデートを提案しても、最終的には家でいちゃいちゃすることしか考えていないのだろう。


顔だけかっこよくてもダメだということを、改めて痛感する。
……でも、17歳の私は、きっとここでも引いたりしないのだろう。


竜見くんからもらった緑茶を一気飲みして、ふぅ、と小さく息を吐く。
そして、竜見くんのほうに体を向けて、ゆっくりと自分の気持ちを言葉にした。


「竜見くん、あのね……私はもっと、少しずつ距離を縮めていきたいの」


< 154 / 276 >

この作品をシェア

pagetop