タイムトラベラー・キス
放心状態とはこんな状態のことを言うのかな。
見慣れない玄関前で座り込み10分ほど経った頃、ピンポンと来客を告げる音が鳴り響いた。

とりあえず立ち上がった私は、近くのテレビモニター付インターホンの前まで移動する。モニター越しに映る人物を見て、私はなぜかすごく安心した。


「理子……?」


『よっ!とりあえず中に入れてもらえる?』


「う、うん」


インターホンについている開錠ボタンを押すと、理子はモニターから姿を消した。

理子は私の知っている理子の姿のままだった。
野々村はかなり大人びて、別人のように見えたけど……どういうこと?
そして一体ここは……どこなのだろうか。


「よっ!野々村はもう出かけた?」


玄関の扉を開けると、私服姿の理子は靴を脱ぎ、迷わずリビングへと向かう。この部屋の構造を知っているようだ。
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