タイムトラベラー・キス

「俺もいまきたとこ。さっそく行こうぜ」

「うん!」


私たちは横に並んで、映画館のある複合ビルへと向かった。
野々村くんはさりげなく車道側を歩いている。

まだ朝だからか、ゴールデンウィークなのに道もビル内も人が少なかった。
きっと昼すぎから混むだろうから、今日は早起きしてよかったかも。



「早起きは三文の得ってやつだな」


野々村くんも同じことを考えていたようだ。
やっぱり私たちって気が合うのかもしれない。


映画館はビル内でも最上階に位置するため、エスカレーターで昇っていく。


「お前が先に行けよ」


「えっ……うん、ありがと」


野々村くんは私を先にエスカレーターに昇らせた。
付き合ってからもいつもそうしてくれる。

……なんで女の子への気遣いが、高校生のうちから出来るのだろう。
まさか、意外と女慣れしているのか。いや、そんな話は聞いたことがなかったけど……。



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