タイムトラベラー・キス

「……とりあえず、今日は急遽この近くにホテルとったから。あいつとは違うところだけど」


「あいつって?」


「さあな。過去の記憶を辿ってみれば。……じゃ、行くぞ」


野々村くんの言葉はいつもより刺々しくて、彼の纏う雰囲気から機嫌が悪いことを感じとる。


タイムトラベルしたことかバレて怒ってるのもあると思うけど、それより“あいつ”って一体誰だろうか。


……少し歩いて、それなりに高いホテルにチェックインし、部屋に入った。

どうして野々村くんが仕事にいく服装なのかも、公園でキスしていたのかも、ホテルをとったのも分からないけど、とても聞ける雰囲気ではない。


今日は付き合った記念日だから、もっとすてきな服装でロマンチックな雰囲気のもと、キスをしてると思っていたけど……。


野々村くんはベッドに座り、ミネラルウォーターを一口飲んだあと、いろいろと私に問いかけた。


「それで、どうしてタイムトラベルしようと思ったのか教えてくれる?」
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