眠りにつくその日まで
健太くんは口のはしでフッと笑うと、



「龍角散がいいな。マジ咳やばいんだわ。」




そう言った。



意外そうな顔をしたのは美羽だった。



ほら見ろ!分かる人には分かるんだ!




私はカバンからいそいそと龍角散のど飴の袋を取り出して、その口をあけて健太くんへと差し出した。



健太くんはそこに手を突っ込んで1つあめ玉を取り出すと、口に放り込んで


「さんきゅ。また明日な春子。」


と、さっさと帰っていった。






健太くんが立ち去ると、


「まさか龍角散を好んで選ぶ高校生がいるとは……」


美羽がひとり言のように言った。




「ますます好感度アップだよー!」



私はハートマークが周りに飛んでるんじゃないかと自分でも思うようなテンションで言った。



「……案外、お似合いかもね2人。」


美羽の言葉にハッとする。


「だから!そんなんじゃないって!!会話できるなんて幸せすぎるくらいなんだって!」



「せっかくJKなのに?もったいない!おじさん、応援しちゃうよ~?」


美羽が気持ち悪い声で言ったので、私達は笑いあった。



雨は強く降っていた。




フグキャの傘は使えるし、健太くんとは話せたし、今日は最高の日だな。


こんな雨なのに、私はルンルン気分で昇降口を出た。







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