今しかない、この瞬間を
人は一人では生きていけないんだと思う。

でも、生きていれば、孤独を感じずにはいられないし、その瞬間がいつやって来るのかもわからない。

屈折した寂しさを周囲に悟られないように生きている彼女と俺は、多分、人一倍、その瞬間に怯えている。


だけど、それでも、気持ちの休まる場所があるだけで、強くいられる気がする。

朱美さんを支えて行くことで、俺は弱い自分も支えているのかもしれない。


すべてを吐き出すように夢中で求め合うことで、心が安定する。

この感情の正体がどんなものなのかは、よくわからないままだけど.......



「最近、何だか楽しそうね。」

「そう?」

「前よりも、寂しそうな顔しなくなった気がする。」

「そうかな?」


抱き合った後、心地よい疲れに酔いしれながら、まどろんでいると、朱美さんが突然、そんなことを言い始めた。

そうなのかな?

自分じゃ、全然わからない。

だけど、毎日、楽しいかどうかって聞かれれば、まあまあ楽しいのかな.......


「いつも小坂あかねちゃんの話してるよね。」

「へっ?」

「本当に仲が良いのね。」

「そっ、そんなことないよ。家が近いから一緒にいるだけだし。」

「隠さなくてもいいじゃない。見ててもわかるわよ。」

「.......。」


朱美さんは、楽しそうにニコニコしている。

焼きもちで聞いてるんなら嬉しいけど、どうやらそうでもなさそうだ。


こんなことをしている相手が、他の女と仲良くしてても何とも思わないのか?

てか、やっぱり、俺なんて、はなから彼女の恋愛対象にはなってないって証拠なんだろうな。
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