今しかない、この瞬間を
瞳を潤ませている彼女を見ていたら、たまらない気持ちになった。

このまま一人にしていたら消えちゃうんじゃないかと思うくらい、彼女がとても儚い存在に見えた。

彼女の苦しみを心からわかってあげることはできないかもしれないけど、少しでもいいから和らげてあげたい.......


そう思ったら、いつの間にか彼女の肩を抱いていた。

彼女は驚いた様子を見せたけど、すぐに自分から肩を寄せて来て、俺の胸に顔を埋めた。

だから、俺はそれを両手で大事に包み込んだ。

そして、観覧車が下に降りて行くまで、黙ったまま、二人ででそうしていた。


上手く言えないけど、彼女を抱きしめている間、俺はとても安らいだ気持ちでいた。

彼女の悲しみを受け止めることで、自分の中にぽっかりと空いた穴が塞がって行くうような感覚を覚えた。


救ってあげたいと思ったからそうしたのに、自分自身までこんなに落ち着いた気持ちになるなんて、これってどういうことなんだろう。

自分でどうすることもできなければ、はっきりとした正体も原因も掴めない。

そんな行き場のない漠然とした寂しさを抱えた者同士の慰め合いみたいなものなのかな.......


車で来ていた彼女に送ってもらいながら、その不思議な感覚について考えていた。

こんなヘビーな相談をされているのに、彼女と一緒にいると安心する。

今まで遊んだどの女の子よりも、しっくりと来る気がする。

どうしてそうなのかはわからないけど、こんな気持ちになったのは初めてなんじゃないかと思う。
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