敏腕社長に拾われました。
それでもなんとかふたりを見送って、ひとりリビングに戻る。ソファーの上に飛び乗ってクッションを抱きしめ、それをボスボス叩いてウップンを晴らす。
「な~が~たぁ~」
普段は絶対に呼べない呼び捨てをすると、苛ついていた気持ちが少しだけ緩和され始めた。
もう、なんで永田さんがここにいるの? 不意打ちなんてヒドいじゃない!
クッションをギュッと抱きしめながら起き上がると、ソファーに座り直す。
それにしても永田さんがここにいるなんて、これっぽっちも思わなかった。今日は急いで帰ってきたし、虎之助も早く帰ってきたらふたりで外食でもと考えていたのにちょっと残念。
さっきからお腹はグーグー鳴っているし、冷蔵庫になにか入ってたかなぁ……とソファーから立ち上がり、ふとさっき永田さんが私の耳元で囁いた言葉が蘇り立ち止まる。
社長とふたりで、積もる話もあったからな──
永田さん、虎之助となんのはなしがあったんだろう。もしかして……。
今日昼間、胡桃ちゃんが言っていた“結婚”の二文字が脳裏に浮かぶ。
チャンスがあれば、そのことも虎之助に聞いてみようと思っていたんだけど、今日は無理かなぁ。
単なるうわさ話であればいいけれど、火のないところに煙は立たないって言うし。
「どうなの、虎之助?」
今はいない家主に問いかけて「アホくさ」とつぶやくと、なにか食べるのはないかとキッチンに向った。