敏腕社長に拾われました。
●未来の事を言えば虎が笑う

出張に行っている虎之助からメールが来たのは、日曜日の夕方六時過ぎ。

《帰りは遅くなる。夕飯はいらない。先に寝てろ》

たったそれだけの心のないメールだったけれど、なんだかちょっと嬉しくて。自分が虎之助からのメールを待っていたことに気づく。

はて? なんでだ?

別に虎之助は私の彼氏じゃない、ただの同居人。なんでそんな人からのメールを、私は待っていたんだろう。

「あ、夕飯の準備があるからか!」

昼過ぎから、夕飯のことがずっと気になっていたからね。せっかく作っても食べないのならもったいない。ひとりで食べるなら、簡単なもので済ませばいいし。

だから虎之助から、早くメールが来ないかなぁ~って待ってただけ。ただそれだけ。

嬉しいと思ったことは棚に上げ、そう自分を納得させた。

今日はほとんどの時間をリビングの掃除に費やし、体はクタクタ。夕飯は簡単に済ませ、明日からの仕事に備えて今晩は早く寝よう。

夕飯は、ペペロンチーノとサラダ。それをパパッと食べ終えるとすぐにお風呂に入り、これまたササッと髪と体を洗い入浴も終了。化粧水でお肌を整え、セミロングの髪をドライヤーで乾かすと、二日前に虎之助が選んだ真新しいパジャマを着てベッドに潜り込んだ。



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