自白……供述調書
 犯人はベランダのガラス戸を破り、侵入となっているが、その壊し方は決して凝った手口では無い。

 ハンマーのような物で、鍵の付近を叩き割っている。かなり乱暴なやり方だ。

 一方、空き巣や窃盗の前科がある木山の手口だが、侵入箇所としてはこの事件同様、ベランダや勝手口が多い。窓ガラスを割って侵入したりもする。

 その手口は、専門の窃盗犯に比べるとかなり稚劣である。

 粘着テープを貼付け、割った際の音がしないようにとか、自分が着ていた物をガラスに密着させて叩き割る。たまにドライバーで亀裂を入れて壊すやり方もしているが、どちらかというと単純な方法が多い。

 確かにこの部分だけを取り上げれば似たようなやり方だ。しかし、決定的に違うのは、侵入する物件である。

 森山がこの点を木山に質問した時、彼はこう答えた。

「一階じゃないと、もし見つかった時に逃げられない」

「玄関からは入らないのは何故?」

「裏から入って、先ずする事は玄関のチェーンロックをする事なんだ。家の住人が入って来る所は殆ど玄関だから、そうしておけば、物色中に戻って来ても直ぐには家の中には入れない。その隙に俺は逃げるという訳だ。それと……」

「それと、何だい?」

「高所恐怖症なんだ」

 この話しは大きな切り札になるかも知れない……

 それと、現場のマンションを見て感じた違和感であった。

 体操選手並の運動能力があれば、ベランダ側の壁をよじ登るのは可能だ。

 だが、何故三階なのか?

 事件当夜、被害者宅の真下に当たる202号室と102号室には、人は居なかった。

 空き巣を働くのであれば、そちらを狙うであろう。

 警察調書では、

『両方の部屋とも、シャッターのような雨戸が閉まっていたから諦めた。』

 となっている。

 ならば、このマンション自体を諦めるのが、これ迄の木山の犯行パターンではないか。

 よじ登って迄犯行に及ぼうとしたのは、完全にその部屋に執着していたからではないだろうか。





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