自白……供述調書
鑑定
 本間刑事と佐藤刑事の代わりに配属された刑事は、二人共駆け出しであった。

 樋口巡査は去年刑事になったばかりの二十三歳。生安(生活安全課)からの移動。

 倉持巡査に至っては、ここ六年ばかり八丈島勤務で、捜査の経験は無いに等しい。

 この配置を見て、署内の誰もが異様に感じた。

「何考えてんだ?一課の仕事させんのに、ひよこが一匹と、島送りにしてたロートルだぜ」

「阿久根さん、よく怒んないですね」

「少し前迄だったら、こんな仕打ちくらった日にゃ間違い無く一悶着起こしてたんだけどなぁ……」

「定年近いと、牙抜かれちまうのかねえ」

「そりゃあ、きちんと定年で終わるのと、定年前に打ち首にあうのでは、貰うもんにえらい差がつくからよ」

「あんなの背負わされたら、定年迄の一年ちょっとも、もたないかもな」

「あれでホシ上げて来いなんて発破掛けられても、無理だわな」

「体のいい追い出しだな。アクさんが、あの二人に足を引っ張られてヘタ打ちすんの待ってるかもよ。そうとでも考えねえ事には理屈に合わねえ……」

 他の課の刑事達も含めて、刑事部屋は一係の配置換えの話しで騒然となった。

 あからさまにこの事を口にする者は少ないが、中には公然と課長連中が居る前で批難する者も居た。

 捜査三課三係の係長である若林警部補などもその一人だった。

 若林は、阿久根と階級、職責は同じだが、刑事としての経歴は阿久根の方が遥かに上である。

 三課は盗班といって窃盗事件を主に扱っている。

 世の中で起きている犯罪の半数近くは窃盗関係だ。

 刑事課の中では一番忙しい部署とも言える。

 その為、他の課から応援を頼む事も多いが、事件の性質的に強行班(一課)との合同捜査も多々ある。

 阿久根からは様々な助力を受けた事もあり、刑事としても若林は尊敬していた。

 光が丘の事件の際は、初動捜査の聞き込みに応援した経緯もある。

 阿久根を現場指揮官として全幅の信頼もしていた。それだけに、今回の件を一層腹ただしく感じていた。






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