自白……供述調書
「その死刑囚が、心安らかに罪の償いの場に赴けたのは、その担当の日頃からの接し方だったのだろうって思ったら、刑務官の生き甲斐ってそれなのかなと思った……」

「それで、担当さんは、そういう生き甲斐を感じれてんのかい?」

「さっき話した担当さん程じゃないが、刑が確定し、懲役に送り出す時、頑張れよって一言掛ける…すると、ニコッとして、はいっ、頑張ります!と笑顔を見せて貰えた時に、何と無くそういう気持ちにはなる。感じようとしてるだけなのかも知れないがな……。
 これを最後に、頑張って罪を償って来いと送り出した人間と、何年かして又顔を合わせたりすると、正直悲しくなる……」

「俺みたいなタロウは、毎度がっかりさせてるって訳だね……」

「まあな、そういう事になる……」

「前に、担当さんは、自分達の仕事は、罪の償いの手助けだ、みたいな事を話してたけど、じゃあどうやって手助けしてくれるんだい?」

「はっきり言って、俺もまだ判っていないかも知れない。具体的に何をどうしてとか、毎日手探りの状態だ。それに、手助けと言っても、何もしてやれんのかもな……」

「担当さん、ばか正直だよね……」

「そうか?」

「ああ、出世しないタイプだ」

「それは当たってるかもしれん」


「一つ、頼みがあるんだけど……」

「聞ける頼みなら構わないぞ。」

「手紙を書きたいんだけど、便箋じゃ足りないんだ。罫線用紙でも、原稿用紙でも、とにかく何でも構わない。沢山書ける用紙を購入させてくれないかな」

「判った。罫線用紙なら特別購入の品目で認められてるから、今直ぐ申し込み書を書け。提出日は別な日だが、今日の受付に回しとく」

「そうしてくれると助かる」

 栗田は木山に申し込み用紙とボールペンを渡した。







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