自白……供述調書
 私は洋式便所に座ったまま氷ついた。

 又、悲鳴のような声が聞こえて来た。

 マムシが無線機で話している。

「……そうです。本職が注意をしたところ、暴れ出したので今取り抑えた訳でして、保護房に入れるよう手続きをお願いします。はい……判りました。そのように致します」

 ものの五分としないうちに、若い刑務官が数人やって来た。

 私の房の前を抱き抱えられるようにして隣人が連れ去られて行った。

 私はまだ便座から立ち上がれないでいる。

 マムシが私の房を覗き込んだ。


「おい木山、俺がこの前注意したのを忘れたのか?
 一応、お前も取調べにするからな」

 私は返事も出来ずにいた。

 翌日、マムシがやって来て、

「木山、今から取調べだ。出ろ」

 連れて行かれたのは、警察の取調べ室に似た小さな部屋だった。

 その部屋に連行される迄の途中、多くの刑務官とすれ違った。彼等は皆、マムシに引き連れられている私を見て、薄ら笑いを浮かべていた。

 調室と書かれた部屋は、廊下を挟んだ刑務官達の待機室の向かいに五部屋並んでいた。

 マムシは私を一番端の五番の番号が書かれた部屋に入れた。

「ちょっと待ってろ」

 そう言って私を椅子に座らせたまま、一旦待機室へと行った。

 薄い灰色の壁に囲まれたその部屋には、事務用のスチール机が中央に置かれていて、警察の取調室と同じような造りだ。

 私が座らされたパイプ椅子は、床と鎖で括り付けられており、これは収容者が暴れたりした場合に椅子を凶器とされない為の措置でそうなっている。

 待たされている時間が苦痛だった。

 取調べでどう答えようかいろいろ考えていた。

 知らぬ存ぜぬを決め込むか……

 それとも正直に話そうか……

 あれこれ考えているうちにマムシが入って来た。




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