ハッピーアワーは恋する時間
「親父さんが俺の父親だったら、俺の人生は今とは違ってただろうと思う。それくらい俺は、親父さんのことが好きだった。父親みたいに慕っていた」
「きっとお父さんもね、亜幸さんのことを、自分の息子みたいに思ってたよ。よく亜幸さんのこと、話してたし」
「だから俺・・・怖かった」
「・・・え?なに、が?」
「存在感が大きくて強かった親父さんが、見舞いに行くたびに・・・変わるのが。あんなに元気だったのに、寝たきりになって・・・でも、俺の前では精一杯元気にふるまって。でも弱くなって・・・。そんな風にふるまわせるのは気の毒だと自分に言い聞かせたが、それはただの言い訳だと分かってる。ホントは、そういう親父さんを俺は・・・見たくなかった。怖かったから。怖かったんだ、俺。だから・・・毎月ここに来て、最期の1ヶ月、見舞いに行かなくて・・・すいませんって・・・。今更謝っても、許してもらえないことだと分かってる・・」

私に背を向けている亜幸さんの体と声は震えていた。
亜幸さん・・・泣いてる。
目から涙を流しているだけじゃなくて、心まで・・・。

私より大きくて頑丈な亜幸さんを守りたいという思いが不意に湧いた私は、亜幸さんのウエストに両手を回して、後ろからギュッと抱きしめた。

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