【短編】愛トキドキ憎しみ
「うん、する」


「……ったく、玲花は言い出したら聞かないんだから」



なぜか智輝はドアノブにかけた私の手を握って、ドアを開けさせてくれない。



「……どうしたの?」



不思議に思って振り返って智輝の顔を覗きこむ。


いつになく真剣な眼差しで智輝に見つめられている気がした……。



「誰とする気?」


「……同中の誘えば誰とでも寝てくれる男が……キャッ!」



えっ?


どうして……?


智輝?



何で……

私を抱き締めているの?



「それなら俺にしとけよ」


「へっ?」


「だから、誰でもいいなら俺に抱かれて」



苦しいくらい強く後ろから抱き締められている私の体は、予想外の展開に硬直していた。


言われたことをすぐには理解できないでいると、体を正面に向き返られ、半ば強引に唇を奪われた――。



「……ッン……」



いつもの穏やかな智輝からは想像もできない激しいキス。


今にも足の力が抜けそう。


甘く激しいキスに酔いしれるかのように、何度も何度も唇を重ねる。



……キス……しちゃった。


体は智輝のキスに敏感に反応して熱くなる。


それでも、心は冷静だった――。


慎司も……千理とキスしている時、私のこと思い出してくれたかな?


智輝とキスしながら、慎司のキスと比べている。


重なる唇を、口の中を侵す舌を、抱き寄せられた身体を……。



「本当に後悔しない? やめるなら今だよ」



そんなこと分からない。

だけど、今更後には引けない。


私は智輝の首の後ろで両手を絡ませ、さらに激しく舌を絡ませた。



「分からない……だけど、やめないで」



「……知らないからな」



智輝はそう言うと、私の肩からバックをおろしてベッドに押し倒した。



< 29 / 46 >

この作品をシェア

pagetop