【短編】愛トキドキ憎しみ
浮気の代償



「玲花ごめんな」



ことが終わった後……。


そのままの流れで服も着ずに智輝に腕枕をしてもらっていた私は、首を小さく横に振った。



「……ううん、謝らないといけないのは私だよ」



離れなくちゃいけないのに。


体をピッタリとくっつけて、肌の温もりを感じている。


ずるいね……私、最低。


慎司のこと責める資格なんてないや。


だって、あの言葉を聞いてからおかしいんだもん。



『好き』



思い出すだけで、心臓が激しく音をたてる。


愛しいって、離れたくないって、心と体が叫んでいる。


……慎司に抱く思いに似ている。


もしね、今、ギュッと抱きついて「私も好きだよ」って言えたらどんなに幸せなんだろうって。


そんなこと思ってしまうんだ。


この想いが恋なのかなんて分からない。


だけど……。


慎司と智輝。


二人が今、私の心の中を支配している。



「……智輝……いつから?」



今までそんな素振りをまったく見せなかったのに。


けど、そんなこと聞かなければよかった。


切なくて苦しい。


ありきたりな表現だけど、そんな思いをさらに増すことになるんだから。



「気付いたのは慎司と付き合いはじめてからかな」


「……そっか」



聞いたところでこんな返事しかできないくせに。



「ごめんな、玲花が後悔するって分かっておきながら。お前が他の男と浮気するなんて耐えられなくて」


「智輝……」



天井を見つめたまま私を見ない智輝。


腕枕はしてくれているものの、それ以上私に触れようとしない。


智輝に触れたい、と思う私の心を躊躇させる。



そっと伸ばした指先。

どこにも触れることなく私の元へ引き戻す。


触れたい……けど触れられない。



そんな時だった。


智輝が私に視線を向けてきた。



「慎司のこと好きなんだろ?」



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