この恋心に嘘をつく

グイッ――と手首を引っ張られた。

恭介との距離が近くなり、瞬きさえも忘れる。


「……何、か?」


小さな声に、恭介が笑う。

笑顔は、やっぱり環に少し似ている。


「磨けば光るかも」

「は……?」


品定めするような恭介の目に、居心地の悪さを感じる。

そもそも、話したことも無いのにこの距離の近さ。


「何をしてるのかな?」

「――!」


環の声に、凛子は慌てて恭介から離れる。

だが、手首を掴まれたままのため、あまり距離に変化はない。

環を見れば、相変わらずの微笑みを浮かべていた。


「いや、兄さ――専務の秘書殿に挨拶を、と思ってね」


途中で言い直し、恭介は目を細める。
環がどう出るのか、待っているのだ。

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