この恋心に嘘をつく
「私の顔に、何か付いているか?」
「いえ。別に」
まじまじと見つめていれば、気づかれた。
慌てて視線を逸らし、余計な事を考えないよう無心に徹する。
エレベーターが止まると、男性は先に凛子を降ろした。
「副社長!」
偶然通り掛かった秘書が、慌てて男性に駆け寄る。
「あなた! 副社長に荷物を持たせるなんてっ」
「――っ」
男性からファイルを受け取ると、乱雑に凛子へとファイルを返してきた。
「彼女に非はない。荷物を持ってやってくれ」
「は、はい」
秘書が数冊のファイルを手に取る。
あまり重さは変わらないが、何も言わないでおこう。
(副社長…と言う事は、専務のお兄さん?)
誰かに似ていると思ったら、環だったのだ。