この恋心に嘘をつく
「可愛い感じの子だった。使えるかどうかは、わかんない」
ゴホン――という音が聞こえて、ある女性に視線が集まる。
「恭介さん、その話し方はやめなさい」
「はいはい」
「はいは一回。全く…」
呆れたように肩を落とす女性が、辰馬の妻⚫郁子だ。
「聞きましたよ。一人暮しをしているのに、毎朝秘書に起こしてもらっていると」
母の言葉に、宮ヶ瀬 恭介は苦笑する。
彼は常務なのだが、いささか不真面目な所がある。
「ふたりを見習いなさい」
環と長男――宮ヶ瀬 貴志に話題が向けられる。
「兄さん達だって、いろいろ秘書にしてもらってるだろ?」
「お前とは違う」
貴志が冷たく言い放つ。
恭介が不満そうな顔をしたが、言い返すつもりはないらしい。