ワケあり彼女に愛のキスを
「ねぇ。あなたの名前は?」
「言いたくない」
「私の名前知ってるんだから教えてくれたっていいじゃない。
まぁいいや。さっき秀ちゃんが〝北川〟って呼んでたし、明日にでも会社の人に聞き回れば……」
「優悟だよ。北川優悟」
舞衣に聞き回られでもしたら、舞衣のターゲットが優悟に移っただとかいう噂が立ちかねない。
女関係の噂には慣れっこの優悟だが、舞衣との噂は回避したいという本能が働いていた。
今まで、人一倍色んな女を見てきたつもりだったが、どうも舞衣は初めてのタイプ……というか、理解ができないのだ。
自分のものさしで計り知れない何かを感じ、そしてその何かに、本能が警告音を鳴らしていた。
関わるな、と。
「北川優悟か。よろしくね。北川さん」
「……課、違うからほとんど関わんねーだろ」
「ねぇ、北川さん。今日できたら泊め……」
「断る」
なんとなく予想ができていたため間髪入れずに断ると、舞衣はそれまでの笑顔を消し眉を吊り上げる。
「だって北川さんのせいじゃない! 鍵取られちゃって帰るところがなくなっちゃったんだから」
「その前に鍵があったら菊池のとこに帰るつもりだったのかよ。
あんな言われ方してたくせに」
「だって……」
舞衣の勢いがなくなったところで、優悟が背中を向け歩き出すと、掴んだままの舞衣の手がワイシャツを握る力を強めた。