ワケあり彼女に愛のキスを


舞衣が困ったような顔で言う。
思いきり顔をしかめて懇願しているところを見ると、本当らしいが……だからといって、部屋に泊めてやるほど優悟もお人よしではない。
というか、そもそもお人よしではないのだ。

どちらかと言えば女には人でなしと怒鳴られる事の方が多いくらいなのだから。

だけど、今自分しか頼る相手がいないとしがみついてくる舞衣を見捨てるのはなんだか後味が悪く感じ……。
どうするべきかと考えを巡らせていると、優悟が答えを出すよりも先に舞衣がはーっと大きなため息をついた。

「そうだよね……北川さんとは今初めて会ったんだし、泊めてなんかくれないよね。
あんまり気が進まないけど、笹田部長に頼んでみる」
「笹田……?」

もう、ツッコんでこれ以上会話を伸ばすのは止めようと思うのに。
舞衣の言う言葉があまりにぶっとんでるせいで、完全に優悟のペースが乱されていた。

「笹田部長、去年の忘年会の時に話しかけてきてくれて、秀ちゃんとの事色々聞いてくれたの。
なんか噂で知ってたみたいで。
その時、何か困った事があったら言いなさいって携帯の番号くれたから」
「笹……」

人事部の笹田といえば、セクハラの度が超えていると社内の女性職員から非難轟々中だと、噂の渦中の人物だ。
自分の立場を利用し、セクハラ以上の事もしているというのはもう社内中に浸透している噂……というより、もう事実。

そんな笹田に相談なんか持ちかけたらどうなるか……すぐに予想がついた。泊まる場所がないだなんて相談すれば、どこかホテルが用意されそのまま……。
……でも、だ。
笹田に舞衣が何されようが優悟には関係ない事。舞衣の男運の悪さと危機感のなさがすべての原因であって、決して優悟のせいではない。


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