ワケあり彼女に愛のキスを


同族嫌悪とでも言うのだろうか。
そんな事をぼんやり考えながら、優悟が缶コーヒーを片手に空を眺める。

息抜きにととった休憩。
自販機の並ぶ、ちょっとした休憩スペースには誰もおらず、優悟がひとり自分の感情について考えていた。

〝カフェスペース〟と一応名前はあるが、カフェと言えるかどうかは怪しい……というよりもまず言えないだろう。
自販機の他には、いくつかテーブルと椅子が置いてあるくらいなのだから。
椅子のひとつに腰を下ろし、窓一面に広がる夕方の空を眺めながら、舞衣と出逢ってからの事を考える。

それを考えていくうちに、秀一に対する苛立ちが今まで感じた事のないレベルだと気づき、その理由を探っているうちに、同族嫌悪などという言葉に突き当たったというわけだ。

自分が最低男だからこそ、同じ最低男である秀一が許せない、そういう事だろうか。
同じに見えて、でも少し違うからこそ、そこばかり注視してしまって苛立つのか……それとも。

そんな事を考えていた時、自販機に小銭を入れる音が聞こえそちらに視線を向けると。
今まさに頭の中に浮かべていた人物がそこにいた。

優悟とは違うメーカーの缶コーヒーを手にした秀一は、そこでようやく優悟に気付いたらしく。
先輩の優悟に対して軽く会釈をし、近づく。


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