初夏…君を想う季節
散々悩んだ結果
「桂くん、今から話すことはただの独り言だと思って聞いてくれ。
もう二度とこんなことを伝えられる日なんて来ないかもしれないから
言いたいことがあるんだ。」

いつになく真剣な声でそう言われた。

「えぇ、はい。」

「僕は一年と少し前、とある学生に声をかけた。
ゼミ覧を見ながら悩んでいそうだったから、たったそれだけの理由でね。
気がつくと僕はその学生と二時間二十分も話し込んでいたんだ。
魅力のあるユニークな人だと思ったよ。
それと同時にひたむきに勉強している姿にどんどん引き込まれていったんだ。
でも、僕は立場上こういう事は表に出してもならないし、
考えてもいけないと思ったんだ。
他大学でセクハラや暴行したなんていうニュースも度々聞いたしね。
散々悩んだんだけど、ようやく今日答えが出たよ。
いくら悩んだって仕方ない。もう僕はその人に心ごと捕らえられているんだから。
僕と…その、お付き合いしてもらえないだろうか?」

「……………。」
目に涙を浮かべるばかりで私は何も言えなかった。
嬉しいという言葉では今の気持ちは到底言い表すことなど出来なかったのだ。

「あ、いや申し訳ない。もちろん断ってくれたって一向に構わないんだ。
立場を利用するなんてことは絶対に何があってもしないから安心して。」

「い、いえ。その、ただただ嬉しくてなんと言葉で表現すればいいのかと思って。
えーっと、お返事ですよね。
今の私の心を表現するなら、赤く染まった夕焼け空よりも綺麗な赤で染まっています。
どれほど嬉しいと伝えても、どれほど感謝を口にしても、
今の私の心を表現できる言葉などありません。
ずっと貴方を見てこの一年と少しを生きてきたのですから。」

「なんて素敵な告白の返事だろう。いいえかはい、そんなものしか返ってこないと
ふんでいた僕の予想は大きく裏切られてしまったな。
ありがとう。ずっとその笑顔のまま僕の傍に居て欲しい。
君は僕の向日葵なんだよ。どうか宜しく頼む。」
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