サンドリヨンに憧れて
距離
家に早く帰るという約束でショッピングモールにやって来た。

「香澄・・・何かほしい物あるか?」

「・・・無いです」

「なんか思い出になる物を買おうと思ったのに・・」

「このネックレスで十分です」

「・・・それじゃ・・香澄が俺の家で使う物買うか」

「え?何もいらんけど・・・」

「行くぞ・・」

私の手を引っ張りあちこちの店を見て回り、結局私のパジャマを買ってくれた。

「あの・・何でお揃い?」

「ええやん・・新婚みたいで」

こんなこと言われたらドキドキしてまともに買い物ができない・・

この先が思いやられる・・・こういう買い物は一人で来ようと思った。

途中休憩でお茶をしていると、孝男さんのスマホが鳴った。

「あ・・ちょっとごめん・・」

席を立ちお店の外に行ってしまった。

さっきの電話といい、今の電話・・一体誰やろう?

聞くのも何か気が引けるし・・どうしたら・・・

ストローをくるくる回しながら氷の回る様子を見ていると

「また考えごとか?」と言いながら戻ってきた。

「何も考えてません・・」と言い返したが

彼の目は私をじっと見て言った。

「うそつき・・・」

その言葉と目線に何も言い返せなかった。
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