恋、物語り




「アヤ、宿題終わってるじゃん」
彼は私のプリントをパラパラと見て驚いて言った。

「うん。…あまりにヒマすぎて勉強するしかなかったの」

「マジか!俺なんて遊び歩いてた」
笑いながら言った後、やるぞー!とやる気を出して彼はテーブルに向かった。


周りを見渡す。
チェストの上には写真が並べられていた。
中学生の頃の小林くん。
…少しだけ幼い。たった数ヶ月前まで中学生だったのに。
隣には高校入学直後くらいだろうか。
冬服の学ランを着て、中島くんと写ってる。


「写真、たくさんあるんだね」
そう言うとチラっとこちらを向いて「うん。俺、写真好きなんだ」と笑って言った。


彼の笑顔はいつも本当に楽しそう。
写真の中の彼がとても楽しそうでこっちまで笑顔になってしまう。


カツカツ…と、彼のシャープペンシルがテーブルにぶつかる音がとても心地よかった。

彼が育った家。
彼を育てた家。
彼の臭いがする。

とても安心する。



「小林くんっていっつも楽しそうに笑うよね。
私、小林くんの笑顔好きだな」

ふと口から出た言葉だった。
彼を見るとこちらを見て顔を赤く染めていた。


急に恥ずかしくなって目を逸らす。
余計なこと言ったかも…そんな思いを抱いて。

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