誰よりも大切なひとだから。
ビール入りファンタは、他の男子からも拒否されている。
「じゃあ、長野くん。あげる!」
悪魔の紙コップが、長野くんの目の前に置かれた。
「ファンタやで。長野くん!」
「あ、ありがとう」
目の前の奇妙な飲み物を、いらない!でも、やめろ!でもなく、ありがとうと言ったのは、長野くんが初めてだ。
……え、もしかして、長野くん……。
予想を裏切ることなく、ファンタ(ビール入り)を勢いよく、飲み始めた長野くん。
叫び声を上げたのは、長野くん、ではなく、周りだった。
奇妙な飲み物を作った張本人も、まさか本当に飲まれるとは思っていなかったみたいで、同じように叫んでいる。
「だ、だ、だ、大丈夫!?長野くん!!」
「べ、別の飲み物!!」
慌てているのは、周囲だけで、長野くん本人は、ケロッとしてる。
いや、むしろ、みんながなぜにそこまで騒いでいるのかわからず、キョトンとしている。
その顔が可愛いと思ってしまった。
のは、束の間で……。
「長野くんが飲んだのって、ビール入りのファンタだよ」
私がそう言ってあげると、
「え。そうなん?わからんかった」
長野くんは、かなりの天然だと確信した。
一通り叫んだあとで、女子の一人が長野くんに尋ねる。
「で、ちなみに、そのお味は?」
「え、普通に飲めるで」
ケロッと返されてしまった。
……もしかして、長野くんって味覚オンチ……だからこの飲み物を飲めるのか、それとも本当に普通に飲める味なのか……?
気にはなったが、誰もそれを確かめる勇気は持ち合わせていなかった。