イクメン作家と恋心。初期版。(修正済み&205ページ挿し絵有り)

えっ?

一瞬何を言われているのか分からなかったが
すぐに理解する。

「あの……それより、サイン会の方を…」

「だから、断ると言っているだろーが!?
やりたいなら勝手にやれ。
その代わり俺は、出ないからな。
また、機嫌悪そうに言われた。

先生が出ないのなら、サイン会をする意味がない。
それだと我が社が困ってしまう。

「お願いします。先生……」

必死に頼み込むがダメだと拒否される。

「そもそもサイン会をして何になるんだ?
作品は、そんな事をしなくても
注目を浴びている。
今さら、やっても下手に騒がれて
リスクになるだけだ!」

先生は、そう言ってきた。

「そんな事ないはずは……」

そう言ってみるが否定は出来ない。

確かに先生が出るとなると
注目を浴びるのは、間違いない。

それは、もう……大変な騒ぎになるかも

「とにかく人前に出るのは、ごめんだ。
作品の打ち合わせなら
話を聞くがそれ以外なら帰れ」

眉を寄せ不機嫌そうに言うと
リビングから出て行ってしまった。

また、怒らしてしまった。

上手くやるはずだったのに
余計に落ち込んでしまう。

そうすると膝元に座っていた睦月君が
ギュッと抱きついてきた。

えっ?

急に抱きつかれたので驚いてしまう。

もしかして、励まそうとしてくれたのだろうか?
まさか…でも、

「睦月君。励まそうとしてくれてるの?」

そう質問してみた。
そうするとこちらを見るとコクリと頷いてくれる。

やっぱりそうなんだ。

「……ありがとう。睦月君」

私もムギュッと抱き締め返した。
素直に嬉しかった。

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