痛々しくて痛い
しかし、タイミングによっては『どうせ洗うなら社員の物と一緒に』という流れになる事もある訳で、そこで「ここまでの茶器洗いは仕事、ここから先は雑用なので、一旦退勤処理をしてから引き続き行う」などという線引きははっきり言って現実的ではない。


なのでもう、茶器類の後片付けは仕事とみなす、という風に上の方が判断したのだった。


とはいえもちろん、どうしても勤務時間内に手を付けられず、退勤の打刻後に片付けを開始したからといって、それを責められるという事はない。


その都度臨機応変に、なるべく自分の不利益にならぬよう動いて下さい、という事だ。


以前染谷さんからお聞きしたそんな話を思い返しつつ、PCの電源を落とした後、ゴミ箱に手を伸ばしたその瞬間。


「あ、愛実は良いよ」


伊織さんにやんわりと制された。


「私が代わりにやっとくから、今日はもう帰りな」

「え?」

「そんで途中病院に寄りなよ。骨が刺さったんだから、念のため診てもらった方が良いよ」

「そうだな。もしかしたら内部が思いの外傷付いてるかもしれないし」

「休み中に熱が出たりしたら大変だからねー」

「確か調べた中に、駅から至近距離の所に病院があったよな。夜8時まで診てくれるらしいから、あそこが良いんじゃないか?」

「あ、で、でも、保険証が…」
< 327 / 359 >

この作品をシェア

pagetop