痛々しくて痛い
「悪意からではなく、あくまでも愛実を気遣うが故の、ちょっと行き過ぎた正義感が今回のいざこざを巻き起こしてしまったって事だな」

「そのようですね」

「これからできる限りのフォローはする。だけど俺達の方から積極的に二人を対峙させて『さぁ、今すぐ仲直りしたまえ』なんて仲裁をするつもりはないから」

「上司や年上の同僚にそんな事を強要されたら、不本意ながらもそれに従わざるを得ない感じになっちゃったりもしますもんね」


伊織さんが合間合間に頷きながら言葉を挟んだ。


「俺達はあくまでも中立な立場でこれからの二人を見守って行く。だから愛実との関係修復は、自力で頑張れよ、慧人」

「はい…」

「でもまぁ、個人的な意見を言わせてもらえば、仲間同志で喧嘩なんて、普通にあることだからさ。そんなに悲観的になるなよな」


樹さんは大人の余裕が感じられる穏やかな表情でフォローを入れてくれた。


「喧嘩できるのも、仲が良い証拠だから」

「そうだよね!怒りの感情なんて微塵もなさそうだった愛実ちゃんを、あそこまで本気にさせるなんて、慧人はある意味すごいよ!」


……颯さん…。


まったく慰めにならないフォローを、どうもありがとうございます…。


「あんたはまた…」


ため息混じりにそう呟いたあと、伊織さんは気を取り直したように俺に視線を合わせると、言葉を紡いだ。
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