痛々しくて痛い
Ο

 アミ



颯さんからお聞ききした病院にたどり着き、転げ落ちるようにしてタクシーから降りた。


お金を多目に持っていて良かった!


そのまま「救急センター」と看板の出ている入口へと突進し、自動扉を抜けて、すぐの場所にある受付へと駆け寄る。


「あ、あの、何十分か前に、麻宮という男性が…」
「愛実ちゃん!」


言葉の途中で名前を呼ばれた。


「こっちこっち!」


その方向に視線を向けると、通路の先に颯さんが立っていて、右手で手招きしている所だった。


それに従い私が動き出したのを確認してから、彼は奥へと進み、角を右に曲がる。


数秒遅れて私も同じルートをたどると、廊下の突き当たりに立っていた伊織さんの元に、颯さんが歩み寄る姿が見えた。


一瞬『染谷さんがいない』と思う。


確か救急車に彼が同乗し、伊織さんと颯さんがタクシーで追いかけたと聞いていたのだけど。


そしてここに到着してから颯さんが、携帯使用可能エリアにて、急いで私に連絡をくれたという流れのようだ。


いや、とにかく今はそれよりも。


「ま、麻宮君は!?」


お二人と向き合った所で焦りながら尋ねる。


「い、いや、それがね…」


颯さんが答えようとしたその時、目の前の部屋の引き戸が静かに開いた。


中から出てきた白衣の男性が私達の顔を順に見ながら言葉を発する。


「ええと…。救急車に同乗して来た男性は?」
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