痛々しくて痛い
「染谷は今、電話を掛けに行っています。会社内での事故ですので、社員が連絡待ちで待機しているものですから」

「さようですか。皆さんは同僚の方という事でよろしいですか?」

「ええ」


伊織さんの回答に私も『そうだったのか』と納得した所で、おそらく担当医師であろう男性に詰め寄った。


「あ、あの、麻宮は大丈夫なんでしょうか!?」


頭を打っているのですよねっ?

よっぽど酷いケガなのでしょうか!?

まさかこのまま植物状態になったりは…。


脳内ではそんな絶望的なセリフが浮かんでいたけれど。


「それほど緊迫した状況ではありませんので、大丈夫ですよ。脳震盪ですから」


相手が淡々と答えた。


「……え?脳震盪?」

「はい。一時的に気を失いましたが、救急隊員が到着する前に目を覚ましたようです。ただ、たとえ数分間でも失神していたという事実は見過ごせませんので、そのままこちらに搬送し、検査を行う事になりました。幸い結果に異常はありませんでしたよ」


私はゆっくりと振り向き颯さんを見た。


彼が『テヘッ』と笑い返してくる。


そ、颯さん…。


私は思わず脱力した。


お互いにテンパりまくりで『とにかく来て!』「分かりました!」というやり取りしかしていなかったので、その流れは知らなかった。


それに検査結果が分かったのはあの電話の後だろうしね…。


仕方ないか。
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