痛々しくて痛い
その姿を見て、どれだけ心を痛めたことか…。


私は眉根を寄せて、厳しい視線を向けながら麻宮君に言い放った。


「き、緊張感が、足りなかったんじゃないの?」


彼がすこぶる驚いたように目を見張る。


「家にきちんと帰り着くまでが仕事なんだから、もっとしゃんとしなくちゃ」

「…うん」

「カルチャーセンターの集まりじゃ、ないんだからね」


怒られているのに、麻宮君の顔は何故か次第に綻んできた。


「ちゃんと聞いてる?」

「うん」


もはや笑っている。


やっぱり麻宮君はドMちゃんだ。


イニシャルもMだしね。


「ごめんね…」


すると泣き笑いの表情になりながら、彼が囁いた。


「これからは気を付けるから、だから、許してくれる?」


私はとてもびっくりしてしまった。


既視感溢れるこのセリフ。


しかもこんな、上目遣いで、懇願するように言われたりしたら…。


「…うん」


もう、許すしかない。


「分かったのならそれで良いよ」

「ありがとう」


麻宮君は心底ホッとしたようにそう言うと、満面の笑みを浮かべた。


というか、私も言わねば。


「……こっちも、色々とごめんね?」


おずおずと謝罪すると、麻宮君は笑顔のまま、何度もコクコクと頷いた。


良かった…。

許してもらえたんだ。


これで無事私達、仲直りできたんだ。


以前の関係性に戻れたんだ。
< 352 / 359 >

この作品をシェア

pagetop