痛々しくて痛い
そんな回想をしつつ、全身に容赦なくまとわりつく冷気から一刻も早く逃れるべく、足早に歩を進めているうちに、ほどなくして目的地である真々田屋本社へとたどり着いた。


まずは1階の化粧室に寄り、マフラーと手袋を外して鞄に仕舞い、コートを脱いで左腕に引っ掛け、個室に入る。


用を済ませて手を洗い、化粧室を出てエレベーターホールへと向かうと、到着した箱に乗り込み、会議室だけでワンフロア占めている6階を目指した。


エレベーターを降り、そこから数十歩の距離に位置する「会議室A」へと足を踏み入れる。


2月1日付けで本社への異動を命じられた社員は全部で10人いて、業務に入る前に連絡事項があるという事で、勤務初日はまず会議室に集合するよう事前に通達されていたのだ。


そこまでは迷う事なくスムーズに行動できた私だったけれど、お互いの顔が見えるよう、輪の形に並べられている長机の前の席がすでにほとんど埋まった状態であるのを目にした瞬間正直焦った。


私自身、本来の出勤時間よりも早く家を出発したのに、他の人はさらに余裕を持たせていたようだ。


来た順に奥から座って行ったらしく、空いているのは入り口に近い場所だった。


私は向かって右手の空席に瞬時に狙いを定めると、急いでそこまで歩を進め、精一杯の音量で「おはようございます」と挨拶を繰り出した。
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