砂漠の賢者 The Best BondS-3

「ラフが?! どうした?!」

エナはゼルに掴みかかった。

鬼気迫るその顔に、ゼルが身を引こうとした時。


「拉致られたっ!!」


端的に言い過ぎるエナの言動は、結果だけはすぐさま理解出来るが、経緯というものがまるで無い。

むっとした顔でゼルからエナを引き剥がしたジストが、鬼の形相を宥めるように覗き込んだ。


「いつ、何処で、誰に?」


話すべきことを提示されたことで、幾分冷静さを取り戻したエナが語った内容はこうだ。

それは、数分前の出来事だという。


替えの服やら下着を買い終え、物見遊山気分で歩きそろそろ五時を迎えようとしていた頃、ふと薬草が切れかけているのを思い出し、葉や薬の類を売る店で足を止めた時のことである。


嗅覚の優れたラフに、薬や葉の混ざった臭いは余りにも酷だと考え、店の入り口で待っているように言いつけた。


そして、目当てのものと、興味ひかれた葉を何種か求めて精算していた時。

ラフが背後で、ぶにゃあ、と潰れたような声を出した。


誰かに尻尾でも踏まれたのかと振り返った先でエナが見たものは。

走り去っていく男と、脇の間から見える、白いふわふわの毛並み。


「! ラ…!」


すぐさま追おうと踏み出したエナの後ろ手を掴む者が居なければ、それは事なきを得たに違いない。



だが、現に。





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