砂漠の賢者 The Best BondS-3

時計の短針が五を示すかどうかという頃。

西日が気持ちよくて、つい立ちながらうとうとしていたゼルの頭を容赦ない力が襲った。


「グーかよっ?!」


跳ねるように飛び起きた第一声はツッコミ。

眠りの浅いゼルは、いつ如何なる時でも「寝惚ける」ということがない。


「何寝てやがる。……エナちゃんは?」

「いや、まだじゃねェの?」


ゼルはなんともなしにそう答えた。

彼女が戻ってきていたのなら、ゼルを襲った容赦ない力はエナによって与えられているはずだから。

だがまあ、ジストがエナの所在を聞くのだから、戻ってきていい時間なのだろう。


「今、何時だ?」


ごく普通に聞いたゼルにジストは馬鹿にしたように鼻で笑った。


「お前の頭上にあるモンは飾りか?」


そういえば、自分は時計台の前に居たのだと思い出す。

嫌味っぽい口調で言うジストにゼルは顔を顰めた。


「エナが居ねェ時、とことん性格悪ィな、アンタ」

「男に優しくしても得ないモン」

「今更かわい子ぶったって、可愛くねェよ」


軽口を叩きながら頭上の時計を見上げる。

時計を確認するかどうかという時。


「ゼル! ジスト!」


切羽詰った声が人ごみの中を掻き分け走ってきた。

その声は勿論、エナのもの。


「やあ、エナちゃん。どしたの? 逢えない時間が愛を育て……」

「煩いわ! ウスラボケ!」


両手を広げてエナを出迎えたジストの腹をエナの拳が抉る。

加速もついていたのだから、おそらく相当痛かったに違いない。


「ラフが……っ! ラフが!!」


殴られてリアクションでも取ろうとしていたジストの動きがピタりと止まる。

ゼルも同様だ。

それほどに、エナの声は焦りに満ちていて。

俄かに震えていた。


その口から出てきた名前が愛犬だったのだから致し方ないことだ、と彼らは「何故コイツはこんなにも手が早いのか」という疑問は胸に押し込んだ。






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