【超短編 11】じゅっこ
「そっか」
 彼女の表情からは、その返事で納得したのかどうかはわからなかった。
 何だかんだ言って結婚してから今年でもう6年目だ。
子供の頃は、結婚したらお互いのことが何でも理解しあえるようにあるものだと勝手な想像をしていたが、実際はそんなものじゃなかった。もちろん昔よりも理解は深まったこともあるだろうけど、逆にわからなくなってしまったことだってあるはずだ。
 恋人として付き合っていた時は、そういうことを惜し気もなく聞くことができた気がする。それはお互いの距離を縮めることがとても大切なことだと思っていたからだ。
 恋人から家族になった彼女は、僕がずっと考えていた距離感というものを曖昧にさせた。
 それは悪いことじゃないし、たいした問題でもない。
 具体的な良いことが10個浮かばなくても、僕は彼女と結婚して幸せだと心から言える。
 さぁ、そろそろ彼女が戦いを終えて疲れている頃だ。帰りは久しぶりに美味しいところに食べに行って、DVDでも借りて家でゆっくりと見よう。
 このまま禁煙してしまうのもいいかもしれない。
 そろそろ新しい家族を増やしたいとも思う。そうしたら、具体例はあと9個だ。
 残りは死ぬまでに見つければ、彼女も文句はないだろう。
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