死と憤怒

輪廻へ至る罰

薄氷の愛憎

鎖と情に縛られた罪人

「貴方を許さない。」

「貴様は戻りたいのか?」

2つの声は反芻する。


「——タナトス。」

呟けば嘲笑が響く。


漸く、心が落ち着いた様子のヴォルフラムは久しぶりに登校した。
父親は仏頂面をしながらも、承諾した。
本当の事を言うと、一生離れに閉じ込めておきたいのだろう。
だが、ヴォルフラムの様子を見て、無用だと考えた。
妻を亡くした後も父の様子は変わることはなく、相も変わらずだ。
「いってきます。」
落ち着き払い、感情を消した表情で父の元から去る。

通学路でローレンスとメアリーと会った。
こちらに向かっていることから、どうやら三人で登校しようとしたらしい。
「大丈夫か?」
開口一番にローレンスが心配する。
隣のメアリーも心配そうだ。
「あぁ。」
心配されている当人は無表情だ。
「貴様らが居る。それは無敵だからな。」
「!!」
そんなことを真顔で言ってのけるヴォルフラムに二人は顔を見合わせた。
「熱でもあるのか?」
「?ない。」
ローレンスにヴォルフラムは首を傾げた。
「実直な感想だ。」
「天然なのか聡いのか……」
メアリーは扱いに困っている様子だ。
「人工物ではな」
「あー!そういう天然ボケはお約束だからやらなくていい!」
「は?」
遮るローレンスにヴォルフラムは眉を寄せた。
「あの時の臆病さが嘘みたいだわ。」
メアリーは数日前を思い出す。

『俺は貴様を……いいや、貴様だけではない。周りのものを殺してしまう。だから、もう、関わらないでくれ。』

苦しそうに言う姿

もう殺したくはないと苦悶していた。

「死が怖くないという言葉を信じただけだ。」
ヴォルフラムは決意を固めた表情で言う。
「そんなことより。」
「ん?」
「え?」
ローレンスとメアリーはきょとんとしている。
「おはよう。」
真剣な表情で挨拶をするヴォルフラムに一瞬、二人は無言になった。
「ふ、あはははは」
ローレンスは笑い出す。
「生真面目ねぇ」
メアリーも笑っている。
「は?」
ヴォルフラムは怪訝そうだ。
「うん。おはよう。」
「おはよ。」
メアリーとローレンスは挨拶をする。
それに安堵するようにヴォルフラムが笑ったように見えた。
その表情は今まで見る彼の顔で一番安らいで見える。

教室に入るとクラスメイトがぎょっとした表情でヴォルフラムを見た。
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