きみが教えてくれた夏
第4章:いないんだ
「今日は最高気温を突破しそうです。熱中症にご注意下さい」



ぼんやりテレビを眺めていたらそんなニュースが目に入った。


まぁ、今日で八月な訳だから最高気温なんて簡単に塗り替えてしまうだろう。


今日は彼がいない。
海音は、もう東京に着いただろうか。


時計の針が丁度、午前十時を示す。
なんか、こうしていると時間が経つのがとても長く感じる。



ちくたく。


ちくたく。



ゆっくりゆっくり。
のろまに時計の針が動く。



「はぁ〜…」



吐き出したため息はすぐに空気と同化して流れていく。


そして頭に浮かぶのは太陽みたいな眩しい笑顔のきみ。


出会ったのは三日前。



三日前まで私は夏が大嫌いで。
私にとっての夏は暑くて、溶けてしまいそうで。
そんな感じで嫌いだった。


だけどきみが私に夏を好きになってもらうだなんてズカズカ入ってくるからいつの間にか夏を楽しんでいた。


きみがいたから、きみのせいで私の中のなにかが変わっていく。


心がまだ追いついてないよ…。
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