続・祈りのいらない世界で

9・ねぐしぇ

ある日、キヨはフウと2人で留守番をしていた。



ケンの収入だけでは不安のカンナは、妊婦であるキヨが一日中家にいる為、キヨにフウを任せ、パートとして働くようになった。




「フウももうすぐ2歳なんだよね。早いなぁ」



キヨは抱っこしているフウに呟いていた。



くりくりした瞳に、サラサラの黒髪。


子どもにしては無口で表情が乏しいが、カゼ譲りなのだろうと思った。




「私のお腹の中にも赤ちゃんがいるんだよ。生まれたらフウ、可愛がってあげてね?」



キヨがフウに笑みを向けると、フウはキヨをじっと見つめる。




「フウとこの子、幼なじみになるんだね。一緒に暮らしてるから兄弟だと思っちゃうかな?…ふふっ。イノリと私みたいだね」



もし今お腹にいる私とイノリの子どもが女の子で、大きくなってフウとこの子が恋に落ちたら

私みたいに沢山傷付いて泣いて、間違った道を歩いてしまうかもしれない。




でも幼なじみであり兄弟みたいだった私とイノリは、悲しい事以上に沢山の幸せを感じて生きてきた。




だから大丈夫。


フウとこの子が私とイノリみたいな関係になっても必ず幸せになれるよ。





キヨはまだ性別のわからない我が子とフウの未来を妄想しながらニヤけていた。





「フウ。フウが大きくなって、死んじゃう程好きな人が出来ても死んだりしたらダメだよ。
私が言ってもあまり説得力ないけど、あなたはカゼが残した大切な存在なの。辛い恋をしたとしても、カゼのように誇らしく生きるのよ」



キヨの言葉が理解出来るわけがないフウは、キヨの頬や唇を触っている。
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