続・祈りのいらない世界で
「それにしても本当に手が掛からないね、フウは。カゼもカンナも手の掛からない子どもだったから遺伝かな。…そう考えると恐い。私の子、私に似たら泣き虫になるし、イノリに似たら暴君になっちゃうし…。参ったなぁ」



キヨはその後、フウに絵本を読んだり一緒に教育テレビを見た後、フウを抱っこしたままソファの上で眠った。




「たでーま。喜べ美月、早く帰って来てやったぞ」



仕事から帰ってきたイノリはリビングに入ると、キヨとフウが寄り添って眠っているのに気付いた。




「あーあ。お前、仮にも妊婦なんだから腹の上にフウを乗せんなよな。あと腹に毛布くらい掛けて寝ろよ。体冷やしたらダメなのに……ったく」



母親譲りなのか、過度の心配性のイノリは毛布を取りに向かうとフウをキヨから抱き上げ、キヨに毛布を掛けた。




「ん〜…フウ、おいで…」



フウの重みがなくなった事に気付いたキヨは、唸りながらもぞもぞと動く。




「もうすっかりママなんだな、美月も」



イノリはフッと微笑むとフウを床に寝かせ、ブランケットを掛けた。


静かに眠るフウの頭を撫でると、イノリは視線をキヨに移した。




「美月、前髪に寝癖ついてんぞ。発芽玄米みてぇ…」



イノリはキヨの寝癖にくるくると指を絡める。




「夫婦は似るって本当だな。もうお前、俺のこと寝癖ってバカに出来ねぇぞ」



イノリはキヨの寝癖を指に絡めながら、キヨのお腹に視線を落とした。




「…美月は俺のだからな。いくら俺のガキだからって渡さねぇぞ。お前は2番だ。…でも美月ももう24なのにガキだから、ガキ2人の面倒見なきゃならないのかよ。大変だな、俺」
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