続・祈りのいらない世界で
「やっ…!!イノリ!?大丈夫!?」

「あぁ。美月が大丈夫なら大丈夫だ」



イノリは雨の雫と共に流れてくる血を手で拭うと、自分が身に付けているネックレスをキヨの首に掛けた。




「…え?」

「俺は仕事中は付けてらんねぇからな。だから美月が持っててくれ。…失すなよ?」

「うわぁぁぁんっ!!イノリ―!!」



宝物を失したキヨ。


5人お揃いのネックレスは、沢山の思い出と軌跡が刻まれたこの世に2つとない宝物。


それを失したキヨは絶望に包まれいた。




そんなキヨにイノリが光を射し込んでくれた時、空から雨雲が消え、夕日が輝きだした。



「帰るぞ、美月」



キヨは濡れてペシャンコになっているイノリの髪を触ると、頷いた。




ネックレスが見つかる事はなかったが、キヨの胸にはお揃いのネックレスが掛かっている。



イノリの全てが刻まれたネックレス。

イノリが刻んできた思い出はキヨと同じ思い出。




だからイノリのネックレスがある限り、イノリがそばにいてくれる限り思い出は刻まれ続ける。



悲しくないよ。
寂しくないよ。



ありがとう、イノリ。





帰り道、2人から滴り落ちた水滴が乾いた地面に平行線に刻まれていた。
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