続・祈りのいらない世界で
そうして数日後。

改めて一泊二日の新婚旅行に行く事になった北山夫婦。



旅行といっても、車で一時間も掛からない場所。



キャリーケースを後部座席に積んだ車に揺られている中、キヨはホテルのパンフレットを眺めていた。



「ここのホテル、2つもチャペルがあるよ!しかも凄く綺麗。こんな高級な所、式代いくらするんだろうね」

「俺らの式の2倍はするんじゃね?」

「チャペルの見学は自由って書いてあるから、明日帰る前に覗きに行こうね」

「はいはい」



チェックインを済ませる為、始めにホテルへ車を走らせた。


リゾートというだけあり、東京湾を背景にパークを囲むようにして連なる沢山のホテル。


まるで海外にいるような雰囲気である。




「うわっ!広っ!!ここホテル!?お城みたーい」



ホテルのロビーに入ると、あまりの広さにキヨが興奮し始めた。



ほっとくと何処かに行ってしまいそうなキヨの手を引っ張りながら、イノリはチェックインの手続きを済ませる。




「部屋もさぞかし綺麗なんだろうね」

「お前は興奮し過ぎだ。どこのガキだよ、ったく」



チェックインを済ませた2人は歩いてパークに向かった。




「ランドなんて小学生の頃、親に連れて行ってもらったのと、大学1年か2年の時、みんなで行っただけだよ」

「まぁ頻繁に来るとこでもねぇからな」



入場口を目指して歩いてる間、キヨはずっと携帯を見つめていた。




「陽ちゃん、ミルク飲み終わってフウと遊んでるって」

「ずっと携帯見てると思ったら、カンナとメールしてたのかよ。心配性な母親だな、美月は」



何処にいても息子の心配するキヨはやはり母親なんだなと、イノリは笑った。
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