続・祈りのいらない世界で
「………うん。キヨは芸能人よりイノリがいいんだね。一途だなぁ」



カゼはキヨにコクっと頷いた。




「キヨ〜イノリなんて見飽きたでしょ。一緒に盛り上がろうよ♪」

「芸能人はテレビで見れるもん」

「イノリなんか毎日見れるじゃん!」

「うぅっ…確かに」



反論出来ないキヨにケンが絡みついて喜んでいる横で、カゼがお菓子を食べ始めた。




「おい、ライブにまで来て菓子食うなよ」

「てか、バッグも何も持ってないのに何処に隠し持ってたのよ?お菓子なんて」

「………ポッケ」




カゼが着ているオーバーオールの胸ポケットを伸ばすと、4人は中を覗き込む。


ポケットの中には、飴やらチョコやらが沢山詰め込まれていた。




「………食べる?」

「いるか!お前、ライブに集中しろよ!!何時でも何処でもポリポリ食いやがって」

「………だって俺好きな歌手とかいないし」

「私も〜。じゃあさカゼ、トイレついて来てくれる?」



カゼが頷くと、キヨはカゼと共にホールから出て行った。




「最近キヨ、カゼ好きだよね。カゼとばっか行動してるし、カゼの自由人さが移ってきてるし。カンナ、ライバルになっちゃったね」


「バカじゃないの?どこをどう見たらキヨがカゼを好きに見えるのかしら。私は知ってるわ、キヨの一途さを。キヨはライブに退屈してるカゼを気遣っただけよ」


「キヨとカゼは唯一兄弟がいるから、色々理解し合える面があんじゃねぇの?気が許せんだよ。ケンは下らねぇ事で騒ぐな」



2人に怒られたケンは渋々会話を打ち切ると、ライブに集中した。
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