不要なモノは愛
私の肩の後ろを軽く押して、松野兄は斜め前を歩く。毎日一人て帰る道をわざわざ送ってもらう意味が分からない。だけど、少し先を歩く後ろ姿を追うしかなかった。

背の高い人は、足も長い。松野兄の1歩と私の1歩は違うから、少しずつ距離が空いていく。縮めようとスピードを早めるつもりはない。

送ってもらわなくてもいいからだ。離れてく松野兄が後ろに視線を向ける。離れる私に気付いて、立ち止まった。


「小夏、気付かなくて悪かった」


「別に。先に行ってくれていいのに」


「それでは送る意味がないだろ?」


送る意味なんて、初めからない。だから、離れてもいいと思ったのに、離れないように私のスピードに合わせて歩く。


「思ったより、星が見えるな」


「え?」


「ほら、上を見てみろよ。この辺が暗いからだろうけど」


駅前から歩いて、右に曲がると明かりが減って、薄暗くなる。だけど、あと10メートルも歩けば、また広い道に出て明かりが増える。
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