欲しがりなくちびる
「ねぇ、浩輔。なんで院に進まなかったの? 教授の助手っていう形でも、大学に残っていればもっと好きな絵を描く時間だって取れたはずなのに」
商店街のアーケードを歩きながら、朔は懲りずに訊ねていた。
「だからさ。俺ぐらい絵が上手いやつなんて、芸大にはいくらでもいるんだよ。それを俺が敢えてやる必要なんてないだろ?」
「でも、なんだか凄い賞を獲ったことあるんでしょ。大学の時、お母さん大喜びしてたよ」
ヨーロッパの方で大きな賞を受賞して新聞に取り上げられたと、その当時の切り抜きを浩輔の母親は今でも大切にスクラップしているはずだ。
「おふくろはいちいち大袈裟だからな」
浩輔はひとつ溜息を吐く。
「でもさ、今でも教授から連絡きたりするってことは……」
「なぁ朔。絵だけで腹はいっぱいにならないだろ?」
朔の言葉を遮るように言うと、浩輔は困ったみたいに笑う。そして、並んで歩く朔の頭にぽんと手を置くと、クシャクシャと髪を撫でた。
商店街のアーケードを歩きながら、朔は懲りずに訊ねていた。
「だからさ。俺ぐらい絵が上手いやつなんて、芸大にはいくらでもいるんだよ。それを俺が敢えてやる必要なんてないだろ?」
「でも、なんだか凄い賞を獲ったことあるんでしょ。大学の時、お母さん大喜びしてたよ」
ヨーロッパの方で大きな賞を受賞して新聞に取り上げられたと、その当時の切り抜きを浩輔の母親は今でも大切にスクラップしているはずだ。
「おふくろはいちいち大袈裟だからな」
浩輔はひとつ溜息を吐く。
「でもさ、今でも教授から連絡きたりするってことは……」
「なぁ朔。絵だけで腹はいっぱいにならないだろ?」
朔の言葉を遮るように言うと、浩輔は困ったみたいに笑う。そして、並んで歩く朔の頭にぽんと手を置くと、クシャクシャと髪を撫でた。