【超短編 12】なんとなく白い箱
次の日は休みだったので、本格的な掃除を昼間から始めることにした。ゴミを分別して玄関に置き雑誌をまとめて紐で束ねテレビの上や窓の冊子などを雑巾がけして布団を干し掃除機をかけた。一通り終わったところで空腹に気づき、掃除に疲れて何か作る気にはなれなかったので近くのファミレスで食事を済ませた。
家に帰ってくるときれいになった部屋にポツンとある白い箱にすぐ目がいった。それがなんとも心地よかった。その夜に彼女が遊びに来て
「なに、これ」
と聞かれた。
箱、と僕が答えると、つまらなそうに持ち上げて一頻り観察した後、同じような表情で元の位置に戻した。それ以上その箱について何も聞かれなかった。
 どうやらその箱は多くの人に興味を持たれないらしい。かといって僕が気に入った理由もこれというものは何もなかった。もし彼女に聞かれたとしても、なんとなくとしか答えられないだろう。そして、彼女もそれで納得してしまうのだ。
 世の中はなんとなくで済まされるもので溢れている。みんな本当はそれがわかっているはずなのに時としていくつかのことを追求しようと躍起になり、わかった気になって喜んだり悲しんだりする。
 数ヵ月後、僕は箱を職場に持っていき屋上から落としてみた。一階に下りて壊れてないか見ようと思ったが、箱は何処にも見当たらなかった
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