拝啓
対面


私は翌日、昨日の母の手紙を何回も読み返していた。
冬也さんにはまだ電話をしていない。
しなきゃいけないことは百も承知だ。


心の準備が出来てないだけ。
でも、母の全てを知るには避けられない事。
私は母の携帯のアドレスを見た。
そして、冬也さんに電話をかけた。


3コールで冬也さんが出た。
『もしもし。』
普通の男の人よりも少し高くでも、優しそうなやわらかい声だった。


『もしもし。』相手はもう一度同じ言葉を繰り返した。
私は落ち着いて返事をした。

『もしもし。冬也さんですよね。』

すると相手は電話がかかってくると予想していたのか、返事をした。

『彩佳の娘さんだね。待ってたよ。』

私は頭が真っ白でしどろもどろになってしまった。

『はい。華澄と言います。冬也さんに会いたいのですが、お時間頂けますか?』

すると相手は少しの間返事が無かった。電話口から子供らしき声が聞こえた…。

『はい。では明日の3時に君の家の近くのファミレスで良いかな?』

私は静かに答えた。
『分かりました。明日の3時待っています。』

私は耳から携帯を離し通話をゆっくり切った。
とうとう核心に触れることが出来る。
知りたい気持ちと、知りたくない気持ちと何とも言えない複雑な気持ちが私の心に広がってゆく。


私は母の携帯を眺めていた。ガムランボールの鈴が着いた携帯。軽く振ると〔シャララーン〕と綺麗な音色がした。

私、間違ってないよね…。良いよね。
私は自問自答しながら明日を迎えた。








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