【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく
***


終わらない夢を見ているようだ。

居心地の良すぎる闇の中、露李は目覚めては気を失ってを繰り返していた。

霧氷と花姫の逢瀬を何度も何度も──。

花姫と呼ばれる度に、自分から狂おしいほどの愛しさが込み上げてくる。


違う、私は。


また目が覚めたと思った瞬間だった。


「──っ!?」


身体に激痛が走った。

ドクドクと左胸から血が流れているのを見て、心臓を刺されたのだと分かった。

深々と刺さる矢を呆然と眺める。


『お前なんかが、いたせいで…!!』


霧氷が現れたときと同じように誰かが現れた。

きつい顔の女性だ。

いつかのデジャヴのような感覚に心臓が波打つ。


「私は、誰」


やっとの思いで出した声は、届かない。


『花姫、愛している』


また現れた霧氷を焦がれるように自分が見つめていることに気がついた。

ほろほろと流れる涙は熱い。止まらない。

愛して、欲しかった。

いつもどこかへ行っていて、居ない母親。

その母親との記憶は偽りで。

一人ぼっちの部屋。大きな屋敷。

冷たい目の親戚。

自分の存在そのものが嫌いな同級生。

私は要らないのだと知っていた。

それでも死ぬことも許されない。


「貴方は、私を愛してくれる…?」


唇から零れた言葉は花姫のものなのか、自分のものなのか。


『ああ、これからもずっと』


目の前の碧い髪の男はそうやって微笑む。


愛して、愛して。

好きだと言って。寂しいの、寂しいよ。


「独りぼっちは嫌、ねぇ、貴方は私を…」


『二度と寂しい思いはさせない』


何て甘い響きなんだろう。


霧氷が露李に手を差しのべる。


弱々しく震えながらもその手を掴もうと手を伸ばした。
が、頭に何かが引っ掛かる。


『花姫?どうしたんだ?』


「私…何か大事なことを、あれ、思い出せない…」


『では忘れてしまうほどの些細なことなのではないか?』


「そう、なのでしょうか」


にっこりと笑う霧氷に身を任せた刹那、露李は意識を失った。





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