【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

いつもとは違う顔、いつもとは違う言葉。

“これが本当の水無月だ”と前に見た結を除く全員が思った。


「これから、露李の“世界”に行ってくるよ」


「そんなことできんのか?」


「俺を誰だと思ってるんだよ、露李の魂の片割れだよ?」


それはつまり、精神世界に行くということだ。

あるかも分からない、曖昧な世界に。

結が息を長く吐いた。


「ちげーよ。戻って来れんのかって聞いてんだ。意味を汲め、意味を」


「雑魚に言われる筋合いないんだけど」


「うるせー!…戻って来いよ」


水無月が少し目を見開く。


「そんなこと、初めて言われたよ」


ずっと、死を望まれてきたから。

そう心で呟いたところで、水無月の中の何かがストンと腑に落ちた。


──ああ、だから。露李は。

頭良いんだか悪いんだか──。


「じゃあね」


水無月は五人に笑顔を向けると、ゆっくりと、露李に口づけた。

ふわりと銀色の光が辺りを包む。





その光が収まった頃、水無月の身体がぐらりと傾いだ。

露李を守るように抱き締めたまま動かない。


鼓動も、息も、何の音も。


水無月からは、聞こえなかった。



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